ギニアビサウからの手紙 第3回 【下】

ギニアビサウは魅力的ではあるけれども、良い所だけではないのです。日本とは違う―そのことはよく分かっているつもりですが、実際に現地で生活するということは、 きれい事だけではすみません。 日本では想像もできない現実の中で、自問自答を 繰り返し、鍛えられながら活動しています。

今回もトモミさん(写真右)の手紙から・・。題して「ラドロン」。

ギニアビサウには、とにかくラドロン=泥棒が多いです。

人ごみでのスリや値段をふっかけられるなんていうのは、発展途上国ではごく当たり前― 一応は、そう覚悟はしています。でも、実際にそういう場面に出会うと、やはり 落ち込んでしまいます。

ガス屋の店員(ギニアビサウでは自分でガスを買いに行かなければならない)のフリをして、料金を渡すとそのまま逃げていった若者がいました。

それから、トラックの荷台に積んだ野菜を、数人が盗み出していったのには驚きました。こちらはトラックに乗っているのに・・。

こういった確信犯の「本格的な泥棒」だけではありません。

水道のある家に勝手に入って水を汲んでいく。そこに洗濯物が干してあったらついでに持って行く・・。

外に物を出しておいたらいつの間にかなくなっていた―なんて事は日常茶飯事。そういった「悪気のない泥棒」があまりに多いのです。

こんなことが続くと、誰も信じられなくなってきます。誰にも何もあげたくない。

でも本当に困っていて、こちらがあげたわずかな物やお金で、「助かった」と喜ぶ人もいます。

ある日若者がたずねて来て「父親が亡くなったので働き手がなくなり、家には自分の母親と小さな弟がいる。自分は家族を養うために地方から戻って来たところだが、 まだ職が見つからない。今日食べる米だけでもくれないだろうか」。

私は迷ったのですが、真実味のある若者に見えたので、米とタマネギを渡しました。

すると、それを見ていた現地の人が「あれは泥棒に入る下見に来たのかもしれない。気をつけた方がいいよ」と忠告してきたのです。

私は驚きました、彼も親切をあだで返す「悪党」なのか―。

でも後日、彼の母親がお礼を言いにきたので、とても救われた気持ちになりました。

いろいろと経験を重ねて、ずいぶん賢くなったと思いますが、さらに上手のラドロン、詐欺師に出会うことも。

「だめもと」という言葉があります。これに習って「うそもと」と思っていれば腹も立たず、本当だった時に嬉しくなれるかもしれない―こう考えたりして、自分の中で折り合いをつけながら現実を受け入れています。

それにしても、こんな生活の中でたまに正直な人に出会うと、本当に美しく見えてしまいます。

NPO法人 エスペランサ

ギニアビサウ共和国支援の会